top of page

舞台の袖の踊り子 / エドガー・ドガ (1834-1917)



制作年 1900-05年頃

画法 木炭、パステル、紙

サイズ 80×105cm


ドガは「踊り子」の画家として広く知られています。彼がこの主題に真剣に取り組むようになるのは40歳の頃でした。劇場に足しげく通い、舞台、舞台の袖、楽屋踊り子たちの生き生きとした一瞬の姿をとらえて描き、巨匠としての地位を築いていったのです。

ドガは、入念にデッサンを重ね、室内で作品を制作しました。写実的な描写や独特な構図は、写真や日本の浮世絵などの斬新な構図に影響を受けたためと考えられています。百点を越す浮世絵をコレクションし、寝室にも飾っていたと云われています。

ドガはパリの裕福な家庭に生まれましたが、1874年、彼が40歳のときに、銀行家の父親が死去してからは莫大な借金をかかえました。この年は、ドガが第1回印象派展に作品を出品した年でもあります。ドガは、道行くパリジェンヌが振り返るようなハンサムでしたが、一度も結婚せずに毎日デッサン帖をかかえて、パリの街の様々な階層の人々の姿をスケッチしてまわりました。ですが、50歳頃になって、日に日に視力を失っていきます。

《舞台の袖の踊り子 》は、ドガが制作を断念する直前に描かれたパステル画です。この絵を描いたころのドガは、ほとんど目が見えなくなっていました。ドガはこう語っています。「目に見えるものを模写することは大いに結構だが、記憶のなかに依然として見えるものだけを描くのはいっそう好ましい。そこで、想像力が記憶と共同するのだ。それから感銘を受けたもの、いわば本質的なものだけを再現すればよい。そうすれば、記憶と空想は自然の圧制から自由になるのだ」と。

かつて、踊り子たちを目の前にし、入念にデッサンをして、《ダンス教室》《踊りの花形》(オルセー美術館蔵)などの名作を描いたドガ。彼がその晩年に描いた《舞台の袖の踊り子》は、それらの名作以上に、「本質的なものだけを再現した」作品だとも言えましょう。

Comments


bottom of page